妊娠を希望して性生活を一定期間続けているものの、妊娠の成立をみない場合は「不妊症」と診断されます。
日本産科婦人科学会では、この「一定期間」という期間を「1年というのが一般的である」と定義しています。
ひとことで不妊症といってもその原因は様々で、女性側・男性側のどちらか、あるいは両方に原因がある場合も考えられます。
また、不妊には年齢も大きく関係しており、加齢に伴って妊娠率は徐々に低下していきます。「赤ちゃんが欲しくても、なかなか妊娠しない」という場合には、期間に関係なく、お早めに専門医に相談することが大切です。
さらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
基本的な検査や治療をもとに、状態に合わせて検査項目を追加し、妊娠に向けて治療を進めていきます。
検査や治療の流れ、体外受精の説明をご希望の方は、16時30分までにご来院ください。
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原因 | 検査 | 内容 | 注意事項 他 |
---|---|---|---|
基本検査 |
子宮癌検診、クラミジア、貧血、肝機能、コレステロール、中性脂肪、B型、C型肝炎ウイルスなど |
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排卵因子 | 1.基礎体温 | 排卵の有無、黄体機能不全などの診断に使用します。 | 排卵の有無、黄体機能不全などの診断に使用します。 |
2.LH、FSH、PRL、E2検査 | 卵巣ホルモン分泌に指令を送る脳下垂体ホルモンと卵胞ホルモンの検査です。 | 月経開始日より3日前後に、採血しホルモン分泌を見ます。 | |
3.TRHテスト | PRLの潜在的増加を見るための血液検査です。 | 月経開始日より3日前後に、TRHを注射後、プロラクチンの分泌反応をみます。 | |
4.甲状腺ホルモン検査 | 甲状腺ホルモンの異常は、妊娠、流産に影響を与えます。 | 採血を行いホルモンを測定します。 | |
5.抗ミューラー管・ホルモン(AMH)検査 | 卵巣の予備能を調べる検査です。卵巣の年齢が進むと値は低下します。 | 採血による検査です。 | |
6.男性ホルモン測定血糖、インスリン測定 | 排卵に影響を与える男性ホルモン、血糖、インスリンの増加を調べます。 | 排卵前後以外の時期に分泌量の測定を行います。 | |
7.卵胞検査(経膣超音波検査) | 排卵日頃に膣からの超音波画像で卵の発育状態を観察し、排卵が近いかを診断します。 | 排卵が近くなると卵胞が大きくなり、直径2cm前後になります。 | |
8.頚管粘液検査 | 排卵日頃に子宮頚管からの粘液分泌状態、結晶形成を観察します。 | 一般的に排卵日ごろには頚管からの分泌物が多くなります。 | |
9.LH,P測定 | 排卵が近いか、終了しているかを調べます。 | 排卵のころに採血するホルモン測定です。 | |
10.プロゲステロン(P)エストロゲン(E2) | 黄体期のホルモン分泌状態を調べます。黄体機能不全の診断です。 | 高温相7日目ころに採血します。 | |
11.子宮卵管造影検査(HSG) | 子宮内に造影剤を注入し、子宮の形と卵管の通過性をレントゲンで診断します。治療効果も大きい検査です。 | 月経終了直後の出血がない状態で、排卵前に行います。透視下で行いますので、過剰な圧を加えることがなく、閉鎖している方以外は痛みはほとんどありません。 | |
子宮因子 | 12.子宮鏡検査 | ファイバースコープで子宮内膜、筋腫、内膜ポリープなどを観察します。 | 外来で月経終了後に行います。 |
13.超音波子宮造営法 Sonohysterography |
子宮腔内に生理食塩水を注入し、経膣超音波で子宮腔内の内膜ポリープ等を観察します。 | 外来で月経終了後に行います。 | |
14.経膣超音波検査 | 子宮内膜の厚さが受精卵の着床に重要です。薄いと受精卵は着床しません。 | 排卵頃の内膜の厚さなどを超音波で観察します。 | |
頚管因子 | 15.頚管粘液検査 | 上記8と同じ検査です。頚管から粘液を採取します。 | 頚管からの分泌量が少ない場合は精子の上昇が困難なため妊娠率が低下します。 |
16.フーナーテスト(性交後試験) | 本邦では行われることが多い、性交後に子宮に精子が上昇しているかを見る検査です。 | 早朝に性交してから来院し、頚管粘液の中に遡上している精子の数を測定します。 | |
男性因子 | 17.精液検査 | 不妊検査の中でも重要な検査です。精子の数、運動率、奇形、炎症などを検査します。 | 3〜4日の禁欲後、自宅で直接容器に採取し、受付に提出してください。 |
その他 | 18.自己抗体検査 | 流早産、不妊の原因として自己に対する抗体(自己抗体)があります。 | リン脂質などに対する自己抗体を調べます。血液検査です。 |
19.クラミジア抗原、抗体 | 不妊症の方にはかかったことがないと思っている方でも、感染していることが多い。 | 感染の既往のある方は子宮頚管分泌物の検査、既往のない方は血液検査を行います。 | |
20.抗精子抗体 | 精子に対する抗体ができると精子の凝集、不動化が生じ精子が卵管まで到達できません。 | 血液検査です。 | |
21.染色体検査 | 夫、妻ともに血液を採取し、染色体の数、形態などを調べます。 | 血液検査です。流産を繰り返すご夫婦に行います。 |
妊娠する、ということは、いまだに不明のことが多く、医療でできることは限られています。私たちはなかなか妊娠しない方に対して、妊娠する確率を上げるためお手伝いさせて頂いております。あくまでも確率を上げるための処置、治療であり、それらをしなくても妊娠することはあるかもしれません。しかし、不妊症という診断がついたということは、自然に任せていると妊娠する確率が低い、ということになります。3年妊娠しない方は自然に任せても、その後の1年で妊娠する方はごくわずかです。95%以上の方は妊娠しません。しかし、まれには自然妊娠する方がいることも事実です。そのまれな事に賭けるか、妊娠する率を上げるため積極的に治療をすすめるかはご夫婦の考え方によります。
しかし、まれなことに賭けることにより、時間だけが経過し、次の高度な医療に進むことを考えた時には、ますます妊娠しにくい時期に来ていたということもあります。
当院では来院後、妊娠する方は、6か月で約半数の方が妊娠し、1年で約8割の方が妊娠しています。しかし、それでも妊娠しない方は、ステップアップしていかなければ、妊娠する確率は非常に少ないものとなります。あくまでも確率です。カップルによっては自然妊娠も不可能ではないかもしれませんが、確率は非常に低いということです。当院は段階を経て、ステップアップしていくことを基本としています。病院によっては、体外受精に早くステップアップしていく所もありますが、当院はできるだけ高度医療を行わずに妊娠できるようお手伝いさせていただいています。しかし、現実的にはそれでも通常の不妊治療では妊娠が極めて困難なことがあります。その方々には、ぜひ妊娠して、二人の赤ちゃんを抱きたいたいということであれば(できなければそれでもいいという方は別なのですが)ステップアップを勧めています。
当院では、高度先進医療も可能であり、一般の不妊治療ではあきらめていた様な重症な不妊症の方も妊娠されており、待望の赤ちゃんを抱いていらっしゃいます。人工授精は当院では最新の洗浄濃縮法により行っており、妊娠率も一般的な成績より高い成績をあげています。また、ご主人が人工授精の日に都合がつかないような忙しい方には、前もって精液を採取し、特殊な方法で凍結した精子を用いることにより、排卵日に人工授精を行い好成績を上げています(他院※では体外受精にすぐステップアップするため、あまり凍結精子による人工授精は積極的に行っておりませんが)。
人工授精まで、または体外受精までしなくてもいいと言う方が時にいらっしゃいますが、その段階まで達した方では、ステップアップをしなければ確率的には難しいレベルに入ったということです。ステップアップするかしないかは、ご夫婦の考え方によりますので、こちらから強制することはもちろんありません。ステップアップの段階に来られた場合には、上記のことを参考にご夫婦でよくお考え頂きたいと思います。
他院とは旭川の病院ではなく、
全国の病院をさしています。
近年、女性の晩婚化が進み、また、仕事を優先し、妊娠を遅らせる方も増えています。35歳以上になって、やっと妊娠を考え始めたという方もいます。しかし、女性の場合、年齢を重ねると妊娠率は低下してきます。特に35歳を過ぎると急激に低下し始め、40歳を超えると1年1年妊娠率は確実に低下していきます。妊娠率と一番相関するのは、ホルモン検査の値より”年齢”と言われています。
では、どうして加齢に伴い妊娠率は低下するのでしょう。それは卵子にその理由があります。卵子は母体の胎内にいる時につくられ、出生後どんどん自然消滅し、数は減って行きます。生涯、排卵される卵子の数は約400個程度ですので、その位の卵子の数があればいいと思われるかもしれませんが、実際は新生児の時には、卵子の元である原始卵胞が約200万個も卵巣に存在します。しかし、月経が開始する思春期のころには、まだ排卵がないにも関わらず、約20-30万個まで減少します。つまり、卵子は自然に消滅していくのです。35歳ころには、卵子の数は約2万5000個程度になり、閉経時には1000個ほどまで減少します。このように卵子の99.9%以上は自然消滅します。
後述するように、精子は新たにつくられますが、卵子は新たにはつくられません。減る一方なのです。一度の月経周期で約1000個、一日にすると30-40個というスピードで減り続けると言われています。
一周期で10個以上の卵子に成長のスイッチが入りますが、その中で最もホルモンに反応が良かった一つの卵胞だけが主席卵胞になり、排卵され、残りは消滅します。スイッチが入らなかった卵胞も先に述べたように1000個程度/月は消えて行きます。
卵子の年齢は実際の年齢と同時に年をとって行きます。見た目に若い方も、元気な方も卵子は確実に年齢を重ねて行きます。また、実際の年齢以上に卵子の数が減っている方もいます。残っている卵子の数が多いか少ないかを知るためには抗ミューラー管ホルモンを測定します。
精子は精巣(睾丸)で造られます。卵子と異なり、精巣は新しい精子を一生つくり続けます。これは男子が産まれてくる時、新たに精子をつくる元の細胞を持って産まれてくるからです。一方、女性の場合、卵子は母親の胎内ですでに細胞分裂を起こし、少し成長した状態で出生しますので、生後、新たに卵子をつくることができません。卵子と精子はこの点が大きく異なります。
つまり、卵子は出生後新たにつくられませんが、精子はどんどん新しい精子がつくられます。男性は高齢になっても妊娠させることができるのはこのためです。ただ、高齢になると精子の数は減ってきますが、女性が閉経近くなると排卵がなくなるように、精子が全くつくられなくなるということはありません。
精子は新たにつくられ、射精の段階までに成長するのに70〜80日ほどかかります。また、射精後5分ほどで卵管に達すると言われています。
以上のように、卵子は精子と異なり、その数は年齢を重ねるにつれ、非常に多くの卵子が減少して行きます。芸能人や有名人が高齢で妊娠した記事を読むと、高齢でも妊娠することは難しくないと考えるかもしれません。若い時は毎回いい卵子が排卵されますが、加齢に伴い、排卵されても卵子の質は低下し、異常な卵子が排卵される確率が高くなるため、妊娠しにくくなり、流産率も上昇します。体外受精をすれば、高齢でも妊娠すると思われている方もいますが、体外受精でも卵子の質は上がりませんので、高齢では妊娠率は低下します。
35歳を過ぎて、6か月妊娠しなければ不妊症の検査をすべきとされています。妊娠するのは排卵日だけではなく、その数日前の性交でも妊娠は充分可能です。月経終了後から排卵日まで、週に2日程度の性交があれば、6か月以内には妊娠するはずですので、もし、それでも妊娠しない場合には検査を受けた方がいいと思います。
女性不妊の原因の約12%は肥満、またはやせによることが指摘されています。
精液所見が最高の状態になるためには3〜4日毎の性交がいいとされています。自然妊娠率は2-3日毎の性交により一番高くなります。精子は女性の生殖器官の中で最高7日間まで生存します。基礎体温や尿中LHのチェックだけでは自然妊娠の機会を改善することはありません。しかし、頻回の性交が難しい場合には尿中LHは役立つかもしれません。・・イギリス産科婦人科学会ガイドライン
妊娠を希望している場合は一度に飲むアルコールに関しては、ビールに換算すると中瓶で1または2本以上、または週に2度以上は飲むべきではありません。男性はビール中瓶で1日に3〜4本までは妊孕性には影響は与えないようです。しかし、過剰なアルコール摂取は男性ホルモンの働きを低下させるとともに、精子の質を低下させることも知っておくべきです。・・イギリス産科婦人科学会ガイドライン
近年、我が国の食生活も欧米化し、脂肪を中心とした高カロリー食を多くとるようになり、女性にも肥満傾向がみられるようになってきました。一方、美容上から極端な食事制限を行い、その結果、やせすぎの女性が増加しているのも事実です。この肥満もやせも女性の性機能に影響を与えております。
肥満には原因が不明な単純性肥満と病気による症候性肥満があります。約90%は単純性肥満とされており、これは消費エネルギーに比較し、摂取するエネルギーが過剰であることにより生じます。
我が国では肥満の人の63%に無月経、稀発月経、過少月経が認められると報告されています。この月経異常はホルモンの分泌異常によるもので、肥満者に見られる過剰な脂肪はホルモン代謝に大きく関与しています。すなわち、脂肪組織では男性ホルモン、女性ホルモンが産生され、卵巣から分泌される女性ホルモンのバランスに影響を与えているからです。その結果、子宮内膜にも影響を与え、無月経などの月経異常を引き起こしていると考えられています。当然、排卵にも影響を与え不妊症の原因にもなります。
この女性ホルモンは子宮内膜を増殖させる作用があるため、これが少量であっても長期間持続的に子宮内膜に作用することにより、内膜に増殖性変化を与え、その結果子宮体癌を誘発することも明らかにされています。子宮体癌患者に肥満の人が多い理由の一つとして、肥満から来る女性ホルモン異常があげられています。
やせは食事摂取量よりエネルギー消費量が多い場合におこり、これも肥満と同様単純性やせと症候性やせに分類されます。10代の女性では過度のスポーツ、美容目的の減食、受験・過労による摂取量減少から生じる単純性やせのことが多いとされています。このやせの場合、体重減少性無月経をきたしやすくなります。一方、成熟期以降の女性のやせは大部分が症候性であり、精神的、心因的因子による食欲異常や消化器疾患、ホルモン異常などが原因です。
最近、激しいスポーツを行う女性に月経異常が多いことが注目されています。体脂肪率が低いほど(やせているほど)月経異常率が高く(表参照)、陸上選手では1週間の走行距離が増加するほど無月経である者が多くなることが報告されていますし、新体操選手でも運動量に比較し、摂取カロリーが非常に少なく、月経異常を認める選手が多いことが報告されています。
また、これらスポーツ選手には疲労骨折が明らかに多いことが示されています。すなわち、無月経の原因となる女性ホルモンの分泌減少は、骨にも影響を及ぼし骨塩量が減少することにより、骨折が多くなるのです。これは最近注目されている骨粗鬆症が閉経後の女性ホルモンの減少によることと同様の機序によるものです。
以上のように肥満も極端なやせも女性ホルモンの分泌に異常をもたらし、妊娠や月経などに様々な影響を与えますのでご注意下さい。
加齢と卵巣予備能・・日本産科婦人科学会誌 2014年
加齢による生殖機能の変化は下記の2つがあります。
加齢により卵胞数が減少し、卵胞予備能は低下します。 予備能の低下により、卵胞発育に要する日数の短縮や遅延が認められます。つまり、月経開始から排卵までの日数が短縮したり、遅延するということです。加齢により卵胞の閉鎖が促進され、消費される卵胞の数が増加します。その結果、加速度的に卵子の量が減少していきます。
卵子の質の低下には、酸化ストレスが関与しているとされています。なかでも活性酸素は環境因子のひとつとして老化の促進要因です。活性酸素により細胞構成成分の損傷が生じ、その結果、細胞機能低下が卵子においても同様に生じます。
加齢は染色体の数的異常をもたらす重要な因子として知られていますが、活性酸素がきわめて重要な役割を演じていることに疑いはないと報告されています(Fertility&Sterilty 2015.103(2))。
特に、卵細胞因子として卵の成熟や初期胚発生に密接に関与するものとしてミトコンドリアと紡錘糸があげられます。
少し難しくなりますが、ミトコンドリアは加齢によりその数は減少し、その結果エネルギーの元のATP産生量が減少します。酸化ストレスがミトコンドリアの質の低下を招き、ミトコンドリア機能不全によりエネルギー産生のATP供給が障害されます。ミトコンドリアはアミノ酸の合成にも関与している点からもミトコンドリアの機能低下は卵の質の低下につながります。
紡錘糸は染色体の減数分裂を制御していますが、加齢に伴い紡錘体構造異常をきたし、そのことが染色体異常発生の一因となっています。
つまり、加齢によりミトコンドリアや紡錘糸の異常をきたし、その結果、卵の質の低下を招いているのです。この異常の原因は酸化ストレスとされています。そこでビタミンCやEなどの抗酸化剤を服用することで酸化ストレスを軽減させ卵の質の低下を抑制する試みもされています。
基礎体温の読み方についてかなりの方が誤解さている方が多いようですので、解説してみたいと思います。では、下記の中で正しいのはどれでしようか。
全て×です。まず、1ですが、基礎体温で排卵日は特定できません。2のように、最も低温になった日を排卵と特定することはもちろんできません。この点を勘違いしている方が非常に多いように思います。確かに最低温の日が排卵の時もありますが、いつも排卵日であるというわけではありません。むしろすでに上がっているかがポイントですが、3のように上がっていても必ずしも排卵が終わっているというわけでもありません。高温になって3〜4日過ぎていれば排卵は起きた後と思われますが、1〜2日の高温ではまだ排卵していないこともあります。
一方、排卵が終わっているのに体温はなかなか上がらないということもあります。一般的には排卵があれば、4日後までには上がるとされています。つまり、低温が3日続いていても、すでに排卵が終了していることもあるということです。排卵している日として一番多いのは上昇している途中のことが多いとされています。
では基礎体温を測る理由はなんでしょう。基礎体温は体温の数字だけでは判断が難しく、グラフにすれば利用価値は高くなります。基礎体温はこれからいつ排卵が起きるか、というより、過去の排卵の有無を見るためや、低温相と高温相の高低差や高温相の長さにより黄体機能不全の診断の参考とするために利用されます。また、過去の基礎体温のグラフの状態を見ることは今後の治療方針を決める上で重要です。 最近、携帯サイトでグラフをつけている方が多くなっていますが、紙のグラフと同様の目盛の比率で縮小されているものもありますが、低温、高温の差がはっきりしないものやグラフが小さいものなどが多いようです。紙の用紙につけた方が判断しやすいので、紙の基礎体温用紙が必要な方はお申し出下さい。
卵巣内の発育卵胞の顆粒膜細胞から分泌されるホルモンで、卵巣の予備能力(卵巣内に現在存在する卵胞の数と卵の質のことです)を知るマーカーとして使用されています。このホルモンは年齢が進むと減少してきますので、測定した値を各年齢の平均値と比較することにより、自分の卵巣は予備能が低下しているかを推測できます。
ホルモンが少ない時は、卵巣の老化が進んでいることを示しています。つまり、実年齢が30歳でも、AMHが少なければ卵巣としては40歳程度のこともあります。
ご希望の方はお申し出下さい。結果判明まで1〜2週間かかります。
タバコに発がん性があることは明らかにされており、一般にも周知されていると思います。また、妊娠している場合には、タバコを吸うと、流産、死産の率が高くなり、胎児の発育も悪いことも知られていると思います。しかし、タバコが不妊の原因になるということはあまり知られていないかもしれません。
タバコを吸っている人は吸っていない人より閉経平均年齢が早いことが分かっています。これは喫煙により、卵細胞が早くに枯渇してしまうことが原因とされています。このことは、喫煙が卵巣に影響を与えていることを示しており、さらに、喫煙は、不妊にも関わってかることが予想されます。実際、下記のようなタバコと不妊、妊娠に関する事実が明らかにされつつあります。
タバコを吸っている人は中々妊娠しづらいと言われています。妊娠を希望してから、妊娠に至るまでの期間が長くなり、12か月以上妊娠しない人は20-30%高くなると言われ、また、3.5か月以内に妊娠する率は、喫煙しない人は58%ですが、10本吸う場合には42%に低下し、9.5か月以内に妊娠する率は、吸わない人は80%ですが、10本以上吸う場合は69%に低下するという報告があります。
体外受精を行なった場合も、タバコを吸っている人は成功率が低いことが知られています。すなわち、体外受精における喫煙女性の妊娠率は非喫煙者に比較し、平均20%減少すると報告されています。また、妊娠したとしても流産率が高くなります。
喫煙は男性不妊にも影響を与えています。喫煙は精子の状態も悪化させ、喫煙している人の精子濃度、総精子数、総運動精子数に有意な低下をもたらします。喫煙者の精子濃度は15.3%低下、総精子数は17.5%低下、総運動精子数は16.6%低下し、正常形態精子の数も低下するとの報告されています。精子の状態が悪い方はタバコは止めた方がいいと思います。
これから妊娠希望の方で、喫煙している方は禁煙が最初の治療です。たばこを吸っていると妊娠するまでにかかる期間が長くなり、また不妊の原因にもなり、さらにせっかく妊娠しても流産、早産になる率が高いことは過去の数ある論文から明らかです。今回、妊娠希望の方で喫煙している方が、早く妊娠するために、禁煙外来を開設しました。禁煙の薬を保険で処方するには、ニコチン依存症管理の施設認可を受けなければ処方できません。今回、当院は旭川の産婦人科で初めて認可されましたので、皆さんの禁煙をお手伝いしたいと思います。
ニコチンパッチやガムはニコチンを含んでいますので、妊娠中には使ってはいけない薬に分類されています(しかし、たばこを妊娠中に吸っているほうがニコチンの他に4000種類以上の化学物質、60種類の発ガン物質を吸っていることになるので、 くすりより危険ですが)。最近発売された、飲む禁煙薬は、ニコチンを含んでいないので、妊娠中は絶対使ってはいけないという薬には分類されていません。不妊治療中にこの禁煙薬を服用し、妊娠しても、その妊娠を中断する必要はありません。妊娠の判明後も服用を継続するかは、たばこを止められないのであれば、継続して服用してもいいかもしれません。上記のように、薬よりたばこの方が非常に危険であることは明らかですので。
禁煙治療終了まで、12週間かかりますが、受診は、初診、2週間後、4週間後、8週間後、12週間後の5回です。総治療費は検査や薬代を入れて、3割負担で自己負担額は19,000円程度です。
たばこ1日1箱300円を吸えば、1か月で約10,000円になりますので、12週間(3か月)では30,000円になり、禁煙治療の方が経済的です。
製薬会社の禁煙のHPを参考にしてください。
人工授精とは、子宮内に直接、精子を注入することにより、卵管に多数の精子が到達しやすい状態にし、卵と受精する機会を増やす方法です。人工という言葉がつきますが、簡単に言うと子宮内に精子を多数送り込むだけの手技であり、体外受精に比較すると、極めて単純な手技です。採取された精子を洗浄した後、濃縮して、濃度の濃い精子を子宮内に注入します。採取された精液をそのまま注入すると、細菌やゴミまで子宮内に注入されることがあり、また、十分な数の精子を注入できません。精液は通常2ml以上射出されますが、子宮内に注入する量は、0.3ml程度です。つまり、濃縮しない場合には、2ml射出されても注入されるのは0.3mlですので、採取された精子の10分の1程度しか子宮内に注入されないことになります。
洗浄・濃縮法では、採取された精子で元気のいい精子はすべて子宮内に注入されますので、卵管、卵に到達する精子の数が増加し、妊娠率は高くなります。人工授精は卵管の通過に異常がない場合に行われます。1回の人工授精の成功率は5-10%と言われており、それ程高い成功率ではありません。しかし、人工授精を行わなければならないような方は、人工授精をしなければ妊娠率はさらに低いものとなり、3年間不妊の方はタイミングでは1周期あたり2%しか妊娠しないとされています。98%の方はタイミングだけでは妊娠しないことになります。また、イギリス産科婦人科学会のガイドラインでは、妊娠を希望してから2年間で92%の方が自然しますが3年間では93%、と2年目から3年目にかけては1%しか増えません。人工授精に進むことにためらっている方も時にいらっしゃいますが、上記のように2年以上妊娠しない場合はタイミングだけでは妊娠率は非常に少ないことも知っておいて頂きたいと思います。人工授精は5-6回までは回数が増える毎に累積妊娠率は上昇しますが、それ以上の回数では妊娠することはあまりなくなります。つまり、5-6回の人工授精を行っても妊娠しない場合には、それ以上行っても妊娠する確率は非常に低くなるという論文が数多くあります。
当院でも同様の結果でした(下記グラフ参照)。人工授精の回数は不妊期間、年齢なども考慮し、決めた方がいいと思います。通常は5-6回で妊娠しない場合には体外受精に進みますが、不妊期間が3年以上の場合や38歳以上の場合は3回ほどで体外授精に進む事も考えた方がいいかもしれません。人工授精を行っても妊娠しない場合の原因としては子宮卵管造影では明らかではない卵管周囲の癒着や、卵管が卵子を取りこむピックアップ機能の低下、受精障害などが考えられます。人工授精の次の段階の治療としては体外受精になります。
人工授精で妊娠する場合は、6回までに90%以上の方が妊娠します。それ以上行っても妊娠する例はわずかになります。6回までに妊娠しない場合はステップアップを考慮します。
しかし、年齢、卵管の状態により、少ない回数でもステップアップを考慮することがあります。
健康な200のカップルが妊娠を試みた場合の各周期の妊娠率
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周期 | 各周期に妊娠を 試みたカップルの数 |
妊娠した カップルの数 |
周期当りの 妊娠率% |
---|---|---|---|
1 |
200 |
59 |
30 |
2 |
137 |
41 |
30 |
3 |
95 |
16 |
17 |
4 |
78 |
12 |
15 |
5 |
66 |
14 |
21 |
6 |
52 |
4 |
8 |
7 |
48 |
5 |
10 |
8 |
43 |
3 |
7 |
9 |
40 |
2 |
5 |
10 |
38 |
1 |
3 |
11 |
37 |
2 |
5 |
12 |
35 |
1 |
3 |
参考論文: Zinaman, MJ, Clegg, ED, Brown, CC, et al. Estimates of human fertility and pregnancy loss. Fertil Steril 1996; 65:503.
表の見方: 上記参考論文のデータです。1周期目に妊娠を試みたカップルが200いたが、その中で妊娠したのは59カップルで、妊娠を試みた中で30%は妊娠しました。そして妊娠しなかった残りの141カップルの中で妊娠を試みたのは137カップルで、その中で妊娠したのは41カップルであり、妊娠率はやはり30%でした。その後、毎月妊娠したカップルを除くと、12か月後には妊娠していないカップルは35カップルで、その中で1カップル、すなわち3%しか妊娠しませんでした。つまり、妊娠を試みて12か月たっても妊娠しない場合、97%のカップルは12か月目で妊娠しないということになります。このことから、1年間妊娠しない場合、その後に自然妊娠する確率は極めて低いということになるります。不妊症の方の場合は、1か月で妊娠する割合は3%より低いということです。 このデータは1996年のものですが、アメリカの産婦人科医が一番多く使用している2008年版検索テキストの中でも参考にされているデータです。
卵管に原因がある不妊症が最も多いとされていますので、女性側の不妊検査としては最初に行われるものです。卵管は卵子と精子が出会う場であり、卵管が閉塞していれば当然受精はおこりません。以前にクラミジアにかかった方、腹膜炎を起こした、手術を受けた、子宮内膜症があるなど癒着を起こすような既往があれば、卵管性の不妊になる可能性があります。卵管造影は痛いということをきかれて受診される方がいますが、油性の造影剤を用いてX線透視装置で造影剤の通過を見ながら行えば、造影剤の使用量も最小限で終わりますので、ほとんど痛みはありません。油性造影剤を使用した場合は検査の翌日も1枚X線写真をとります。水性造影剤を使用した場合は1日で終わりますが、痛みが強い、細かい点が不明などの欠点があります。油性の造影剤を使用した方がその後の妊娠率は高いと言われています。
卵管造影は左右の卵管の状態が別々に判断でき、通過はしているが癒着がありそうであるなどの観察が可能です。しかし、卵管造影の診断は絶対的なものではなく、正診率は80%くらいといわれています。つまり、卵管造影で通過しているとされていても、実際は閉塞していたり、またその逆もあるわけです。卵管造影は卵管の中の通りを見ているので、卵管の外側の癒着は分からないこともあります。卵管造影でも異常がなく、他の検査でも異常がないにもかかわらず妊娠しない場合には、卵管の癒着が原因となっている場合が多く、体外受精の適応となります。
子宮卵管造影は痛い、と思っている方が意外と多いのですが、当院ではテレビモニターを見ながら透視下に造影検査を行いますので、強い圧をかける必要もなく、卵管が通過している場合はほとんど痛くありません。以前子宮卵管造影を行い、痛かったとおっしゃる方も当院での子宮卵管造影時にはほとんど痛みがなかったと話されています。ただ、閉塞している場合には痛みを感じることがあります。
注:造影剤にヨード剤を使用していますので、アレルギーのある方はお申し出ください。
「診療予約のページ」をお読みになってからご予約願います。
また、診療に時間がかかる方が集中した場合はお待ち頂く事があります。